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【目的】
近年薬物動態における薬物輸送トランスポーターの役割に注目が集まっている。P糖蛋白は腸管、肝、腎、血液脳関門に存在するくみ出しポンプである。最近の試験内研究ではパロキセチンはP糖蛋白の基質であることが報告されている。しかしながら、パロキセチンの薬物動態おけるP糖蛋白の関与を示すデータはない。本研究の目的はパロキセチンの薬物動態に対しP糖蛋白の阻害作用を持つイトラコナゾールの影響を検討することであった。
【方法】
対象は13名の健常者であり、その平均年齢±SD(範囲)は 24.2±3.5 (21-35) であり、平均体重±SD(範囲)は57.3±7.2 (45-67) kg.であった。全対象にイトラコナゾール100mgあるいはプラセボを6日間投与し、6日目の朝にパロキセチン20mgを単回経口投与した。48時間まで採血を行い、パロキセチンの血清濃度をHPLCで測定した。統計学的解析はpaired t testにてp<0.05を有意とした。なお、本研究は弘前大学医学部倫理委員会の承認後、実施された。
【結果】
パロキセチンの最高血漿濃度はプラセボに比較しイトラコナゾールで1.3倍有意に高かった(6.7±2.5 versus 9.0±3.3 ng/ml, p<0.05)。パロキセチンの血漿濃度時間曲線下面積はプラセボに比較しイトラコナゾールで1.5倍有意に高かった(137±73 versus 199±91 ng*h/ml, p<0.01)。しかしながら、消失半減期は有意に延長していたが(16.1±3.4 versus 18.8±5.9 hours, p<0.05)、その程度は小さかった(1.1倍)。
【考察】
うつ病患者は重症になるとセルフケアが不十分となり真菌感染の恐れがあり、これらの薬物の併用は臨床的に十分に考えられる。
本研究の結果はイトラコナゾール群でパロキセチンの血漿濃度の上昇が認められた。これはイトラコナゾールがパロキセチンの生体内利用率の増加あるいはクリアランスの低下が考えられる。イトラコナゾールは消失半減期は有意に延長したものの、その差は14%と少なかった。したがって、イトラコナゾールによるパロキセチンの吸収の増加あるいは肝での胆汁排泄の阻害による生体内利用率の増加によるものと考えられた。
イトラコナゾールはCYP3A阻害作用が知られているが、CYP2D6 の阻害作用はない。また、イトラコナゾールは用量依存的にP糖蛋白の阻害作用を持つ。一方、パロキセチンはCYP2D6の基質であるが、最近の試験内研究ではパロキセチンはP糖蛋白の基質であることが報告されている。したがって、本研究の結果は、イトラコナゾールのP糖蛋白の阻害作用がパロキセチンの薬物動態に影響を与えたと考えられる。したがって、P糖蛋白の阻害作用を持つ多剤を併用した場合、パロキセチンの薬物動態に影響を与える可能性がある。
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