olanzapineのカテコールアミン動態、BDNF、サイトカインに対する影響

Effects of olanzapine on plasma levels of catecholamine metabolites, cytokines, and brain-derived neurotrophic factor in schizophrenic patients
堀 輝1, 2、吉村 玲児1、山田 恭久1, 3、杉田 篤子1、三苫 正惠1、井田 能成4、中村 純1
  1. 産業医科大学 精神医学教室
  2. (株)東芝セミコンダクター社 北九州工場健康支援センター
  3. セイコーエプソン富士見事業所健康管理室
  4. 小倉蒲生病院

International Clinical Psychophamacology 2007, 22(1), 21-27


【緒言】
我々はin vitroの研究でolanzapine(OLZ)がnoradrenaline transporter(NAT)を阻害することを報告した(Yoshimura et al, 2005)。このOLZのNATに対する阻害作用はOLZがカテコールアミン動態へ影響を及ぼす可能性も考えられる。最近、統合失調症患者では神経栄養因子やサイトカインの異常が認められるといった報告、さらにはカテコールアミン、神経栄養因子、サイトカインが相互に影響しているとの知見もある。今回我々は、OLZの統合失調症患者におけるカテコールアミン、神経栄養因子、サイトカインの血中動態に及ぼす影響について検討を行なった。

【対象と方法】
対象は産業医科大学病院神経精神科および小倉蒲生病院の入院および外来患者32例(M/F: 18/14, age: 35±18 yr)でDSM-IVの統合失調症の診断基準を満たし、OLZ単剤による治療が行われた患者である。精神症状の評価はPANSSを用いた。OLZ投与前と投与8週間後の午前7-9時に採血を行い、血中MHPG, HVA濃度をHPLC-ECD法、血中BDNF,IL-2、IL-6,TNF-α濃度をsandwich ELISA法を用いて測定した。測定はdupulicateで行い、その平均値を測定値とした。また、CV値はいずれも5%以下であった。本研究は産業医科大学倫理委員会の承認を受けており、患者からは書面にて同意を得た

【結果】
(1)OLZ投与量は5-20 (17.0±6.0)mg/dayであった。(2)OLZ投与によりPANSS陽性症状得点(PANSS-P)が25.5±5.0から14.8±6.1、PANSS陰性症状得点(PANSS-N)が25.4±5.1から18.5±4.2へと低下した。(3)OLZ投与により血中HVA濃度は低下し、それはPANSS-Pの変化と相関傾向を示した(p=0.075, r=-0.322)。(4)OLZ投与により血中MHPG濃度は増加し、それらはPANSS-Nの変化と相関していた(p=0.048, r=0.313)。(5)8週間のOLZ投与では血中BDNF、IL-6、TNF-α濃度に影響はなかった。(6)統合失調症群において血中IL-2濃度が上昇しておりOLZ投与後に低下した。(7)血中HVA濃度と血中IL-2濃度に相関が認められた(p=0.033, r=0.383)

【考察】
OLZのNAT阻害作用がMHPGの増加と関連し、陰性症状の改善と結び付いている可能性が考えられる。しかし、このOLZのNATを介したノルアドレナリン神経への作用はBDNFに影響を与えない可能性が示唆される。また、統合失調症患者では血中IL-2濃度と血中HVA濃度の増加があり両者に正の相関があり、OLZ治療で低下していたが、この結果はIL-2がドーパミン神経活動を制御しているというKimらの報告(2002)と一致していた。OLZのカテコールアミン、神経栄養因子、サイトカインなどに対する影響が臨床効果や神経保護作用と関連する可能性も想定される


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