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【はじめに】
覚醒剤の乱用者数は世界中で増加している。覚醒剤の使用により、幻覚妄想状態、うつ状態、攻撃性の亢進など、様々な精神症状が惹起されることが知られている。さらに、これらの症状は覚醒剤の使用中止後もしばしば遷延することが報告されている。これまでの動物実験により、覚醒剤はセロトニン神経に対する傷害作用を有することがわかっている。そこで我々はポジトロン・エミッション・トモグラフィーを用いることにより、セロトニン・トランスポーター密度を測定し、これらの変化と臨床的特徴との関連について検討した。なお、本研究は浜松医科大学及び浜松医療センターの倫理委員会で承認を得ており、文書により研究の詳細を説明した後に同意を得た者のみを対象とした。
【対象と方法】
覚醒剤使用者12名及び健常者12名である。精神症状評価には、攻撃性評価尺度 (Aggression Questionnaire)、ハミルトンうつ病評価尺度(17-item HAM-A)、ハミルトン不安評価尺度 (17-item HAM-D)、簡易精神症状評価尺度 (BPRS) を用いた。トレーサは、セロトニン・トランスポーターへの選択性の高い[11C](+)McN-5652 を用いた。動脈血漿及び脳内から得られた時間放射能曲線を用いて [11C](+)McN-5652 distribution volume イメージを作成し、これらのイメージをもとに voxel-based statistical parametric mapping 解析を行った。
【結果及び考察】
覚醒剤使用者では、健常者と比較して、脳内の広範囲におけるセロトニン・トランスポーター密度が有意に低下していた。また、眼窩前頭前野、側頭葉、前帯状回皮質におけるセロトニン・トランスポーター密度の低下が攻撃性の増強と密接な関連があることが明らかとなった。これらの結果とこれまでの動物実験の結果とを勘案すると、覚醒剤使用者ではセロトニン神経が傷害されている可能性があることが示唆された。セロトニン神経は攻撃性や衝動性を抑制する働きを担っていると考えられている、覚醒剤使用者では、セロトニン神経が傷害された結果、セロトニン神経の機能障害が生じ、攻撃性が亢進するものと考えられた。
【引用論文】
Sekine Y, Ouchi Y, Takei N, Yoshikawa E, Nakamura K, Futatsubashi M, Okada H, Minabe Y, Suzuki K, Iwata Y, Tsuchiya KJ, Tsukada H, Iyo M, Mori N : Brain serotonin transporter density and aggression in abstinent methamphetamine abusers. Arch Gen Psychiatry 63:90-100, 2006. |