妄想性うつ病に対するrisperidone併用療法の有用性の検討
後藤 牧子、吉村 玲児、柿原 慎吾、山田 恭久、加治 恭子、新開 浩二、上田 展久、中村 純
  • 産業医科大学精神医学教室

【緒言】
妄想性うつ病は抗うつ薬の単独治療では反応が乏しく、電気痙攣療法、経頭蓋的磁気刺激療法、抗うつ薬と定型抗精神病薬などによる治療が行われている。最近、妄想性うつ病に対する非定型抗精神病薬の有用性の報告が散見されるが、その作用機序に関しては十分には明らかにされていない。今回我々は妄想性うつ病に対するrisperidone併用療法の有用性を検討し、その作用機序に関して血中カテコールアミン動態から臨床精神薬理学的な検討を行った。

【対象と方法】
産業医科大学病院神経精神科の外来および入院患者で、DSM-IVで双極性障害(大うつ病エピソード)あるいは大うつ病性障害の診断基準を満たし、精神病性の特徴を有する20例を対象とした(M/F:8/12,age:54±18)。Risperidone投与前および投与4週間後に採血を行い、3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)、homovanillic acid(HVA)濃度をHPLC-ECDを用いて測定した(測定はduplicateで行い、CV値はいずれも5%以下であった)。評価尺度はHamiltonうつ病評価尺度(Ham-D)、Positive and Negative Sympton Scale(PANSS)を用いた。Ham-Dの改善率が50%以上をresponder、50%未満をnonresponderと定義した。なお、本研究は産業医科大学倫理委員会の承認を受けており、患者からは書面にて同意を得た。

【結果】
20例中17例で気分安定薬や抗うつ薬が先行投与されていた。(paroxetine 6例,lithium 3例,valproic acid 3例,clomipramine 2例,fluvoxamine 1例,amitriptyline 1例,amoxapine 1例)。Risperidoneの投与量は1-3(1.8±0.5)mg/dayであり、20例中11例(55%)がrisperidone投与4週間以内にresponderとなった。Responderではnonresponderに比べrisperidone投与前の血中HVA濃度が有意に高値であり、risperidone投与による血中HVA濃度の変化と抑うつ症状の改善の間には有意な関連が認められた。一方、血中MHPG濃度に関してはrisperidone投与前後でのresponderとnonresponderの間に差は見られなかった。また、risperidone投与は定常状態の血中paroxetine濃度に変化を与えなかった。

【結論】
妄想性うつ病ではドパミン神経系の亢進が考えられ、risperidoneの妄想性うつ病に対する効果には、ドパミン神経系の抑制が関与していることが想定される。さらに、risperidone投与前の血中HVA濃度がrisperidoneへの反応の指標となる可能性も示唆された。


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