セロトニン3Aおよび3B受容体遺伝子多型がパロキセチン誘発性の嘔気に与える影響

The effect of 5-hydroxytryptamine 3A and 3B receptor genes on nausea induced
by paroxetine
須貝 拓朗1、鈴木 雄太郎1、澤村 一司1、福井 直樹1、井上 義政2、染矢 俊幸1
  1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野
  2. MPテクノファーマ

【目的】
吐き気は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)によって惹起される深刻な副作用の一つである。セロトニン(5-HT)受容体遺伝子とSSRIsにより引き起こされる副作用との関連を検討した報告はいくつかなされているが、吐き気との関連を報告したものは少ない。我々はパロキセチン(PRX)内服中に吐き気を生じた日本人患者において、5-HT3Aおよび3B受容体遺伝子多型、チトクロームP450(CYP)2D6遺伝子多型と吐き気の発生との関連を検討したので報告する。

【方法】
対象は新潟大学医歯学総合病院精神科に、外来通院あるいは入院中でPRX内服中の日本人患者78名(男:女=28:50)で平均年齢は38.4±13.8(平均±S.D.)歳であった。診断の内訳はDSM-IVTRの診断基準により、大うつ病性障害39名、不安障害25名、適応障害6名、特定不能のうつ病性障害7名、その他の気分障害1名であった。身体疾患の明らかなものは除外した。遺伝子多型はそれぞれPCR法を用いて同定し、PRXの血中濃度はHPLC法を用いて測定した。本研究は新潟大学医学部遺伝子倫理審査委員会にて承認を受け、対象は本研究の目的について十分に説明を受け、書面で同意の得られた者のみとした。

【結果】
1.5-HT3A受容体遺伝子のPro16Ser多型およびC195T多型、5-HT3B受容体遺伝子のTyr129Ser多型を同定した。
2.5-HT3B受容体遺伝子Tyr129Ser多型においてTyrアレルを有する患者で有意に吐き気を発生する頻度が高かった(P=0.014)。
3.5-HT3A受容体遺伝子多型およびCYP2D6遺伝子多型については吐き気との有意な関連は見出せなかった。
4.性別、年齢、PRX用量および5-HT3BTyr129Ser多型と吐き気との関連を検討した。
ロジスティック解析においても、Tyrアレルを有する患者は吐き気を発生する頻度が有意に高かった(P= 0.048)。

【まとめ】
今回の我々の結果、5-HT3B受容体遺伝子Tyr129Ser多型がPRXによって惹起される吐き気に有意な影響を及ぼす可能性が示唆された。一方で5-HT3B受容体遺伝子との関連を否定するものや他の5-HT受容体遺伝子多型との関連を示唆する先行研究も存在し、今後さらにNを追加し他の5-HT受容体遺伝子多型との関連についても検討する必要があると考えられた。


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