1)統合失調症分野

セロトニン2A受容体遺伝子(HTR2A)T102C多型と統合失調症の陰性症状:リスペリドン単剤治療下でのPANSS陰性症状評価尺度を用いた関連解析
鈴木竜世*、西山毅* 、山之内芳雄*、北島剛司* 、池田匡志**、木下葉子*、岸太郎*、尾崎紀夫**、岩田仲生*

*藤田保健衛生大学医学部・精神医学教室 **名古屋大学大学院・医学系研究科 精神医学分野

【はじめに】リスペリドンはドーパミン(DA)D2遮断作用による抗精神病作用に加え、セロトニン(5−HT)2Aアンタゴニズムによる副作用軽減、特に前頭皮質におけるDA神経伝達に関与して陰性症状改善作用があるという仮説がある。統合失調症死後脳前頭葉での5-HT2A受容体が減少していること[1]、また同じ第2世代抗精神病薬オランザピンによる陰性症状改善効果がHTR2A -1438A>G多型と関連することが報告されていることから、今回リスペリドン(RIS)単剤治療を8週間行った時点での陰性症状を評価しHTR2Aとの関連を検討した。

【対象と方法】対象は統合失調症患者合計102例。RIS単剤治療8週時点で、PANSSを用いて陰性症状評価を行った。未治療状態からRISを使用したものが58例、定型抗精神病薬からRISに切り替えたものが43例。罹患年数は9.1±13.1、RIS投与開始時点でのPANSSの総合点数は83.7±26.8、8週時点でのRIS投与量は3.53±1.76mg。本研究は藤田保健衛生大学倫理審査委員会で承認され、全対象から文書による同意を得た上で行った。
T102C多型遺伝子型はPCR-RFLP法を用いて行った。ハーディー・ワインベルグ平衡の検定をχ二乗法で行った。
PANSSの陰性尺度合計点を従属変数とし、T102C多型遺伝子型、罹患年数、投与開始時PANSS総合点数、初発例か切り替え例か、8W時点RIS投与量を説明変数として重回帰分析を行った。

【結果】102Tと陰性症状との間で有意な相関(P=0.014、検出力0.78)を示した。すなわち102T/Tホモの患者は102T/Cヘテロの患者より9.7%、102C/Cホモの患者より31.9%8週時点での陰性症状が悪いことが示された。

【考察】RIS単剤治療8週時点でPANSSでの陰性尺度症状評価とHTR2A-T102C多型との関連を認めた。我々は以前RIS治療の反応性そのものを予測する遺伝子多型としてDRD2のデュプロタイプを報告しているが[2]、今回はある程度の治療を行った後に持続する陰性症状を評価した。PANSSの陰性尺度は、昨今統合失調症の中心症状として捉えられるようになってきた認知機能障害の一部を包含しており、特に社会復帰やQOLを目標としたこれからの治療戦略にとって重要である。今回の結果からRIS治療において陰性症状が治療前より予測可能となれば、早期からの治療介入をはかることで患者の長期的な社会適応や予後を改善させる可能性がある。
また5−HTは前頭皮質においてDAのみならず、グルタミン酸やGABA神経伝達を制御していると考えられる。これらの神経ネットワークやそれを介在するα2アドレナリン受容体やアセチルコリン受容体などとの関連を今後検討していくことで、個々人の治療反応性や副作用プロファイルを遺伝子型で予測し最適の治療戦略を策定する可能性が展望される 。

 参考文献
  1. Dean, B., The cortical serotonin2A receptor and the pathology of schizophrenia: a likely accomplice. J Neurochem, 2003. 85(1): p. 1-13.
  2. Yamanouchi, Y., et al., Effect of DRD2, 5-HT2A, and COMT genes on antipsychotic response to risperidone. Pharmacogenomics J, 2003. 3(6): p. 356-61.

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