覚醒剤精神病の発現機序に関する臨床研究
−PET及びプロトンMRSを用いて−

関根吉統1)、三辺義雄1)、鈴木勝昭1)、伊豫雅臣2)、武井教使1)、森 則夫1)
セキネヨシモト、ミナベヨシオ、スズキカツアキ、イヨマサオミ、タケイノリヨシ、モリノリオ

1) 浜松医科大学精神神経医学
2) 千葉大学大学院医学研究院精神医学

 覚醒剤使用者ではドパミン・トランスポーター ( DAT ) の密度が減少していることが示唆されている。そこで PET を用いて覚醒剤使用者のDAT密度を測定し、精神症状との関連性について検討した。また、1H MRSを用いることにより基底核における分子組成変化についても検討し、その変化と精神症状との関連性について検討した。本研究は浜松医科大学倫理委員会で承認を得ており、研究の詳細を説明した後、文書による同意を得た者を対象とした。
PET 研究:関心領域は線条体、側坐核、前頭前野とした。覚醒剤使用者ではいずれの部位においてもDAT密度が低下しており、DAT密度と覚醒剤使用期間との間には負の相関関係が認められた。また、同部位におけるDAT密度と精神症状の重症度との間に負の相関関係が認められた。すなわち、覚醒剤の使用が長期になるほどDAT密度が減少し、また、精神症状も重症となることが示唆された1)
1H MRS 研究:関心領域は左右基底核とし、得られたスペクトルからアセチルアルパラギン酸 ( NAA )、クレアチン・クレアチンリン酸 ( Cr+PCr )、コリン ( Cho ) のピーク面積を算出した。NAA/Cho比は覚醒剤使用者と健常者の間に有意差はなかった。一方、Cr/Cho比は覚醒剤使用者で低下しており、この低下は覚醒剤の使用期間及び精神症状の重症度との間に相関が認められた。すなわち、覚醒剤使用が長期になるほどCrが低下し、また、精神症状が重症になることが示唆された。Cr+PCr は細胞内ATP/ADPの利用に関与しており、その低下はエネルギー利用障害と関連することが示唆されている。従って、覚醒剤使用者では細胞内エネルギー利用に障害が生じており、それが精神症状の病態発生に関与していることが推測された2)

1) Sekine Y, et al. (2001): Am J Psychiatry 158:1206-1214
2) Sekine Y, et al. (2002): Neuropsychopharmacology, in press

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