気分障害とCytochrome P450 2D6 (CYP2D6)
:気分障害の症状遷延化におけるCYP2D6遺伝子重複の関与

河西千秋 1)、Hans Ågren 2)、Leif Bertilsson 3)
カワニシチアキ、ハンス・オ−グレン、レイフ・バ−ティルソン

1)横浜市立大学医学部精神医学
2)スウェ−デン・Karolinska研究所Huddinge病院精神科
3)スウェーデン・Karolinska研究所Huddinge病院臨床薬理学

CYP2D6はSSRIを始めとするほとんどの抗うつ薬の代謝に関与する。個体におけるCYP2D6の
代謝能はその遺伝子多型の影響を受けるが、CYP2D6遺伝子重複を有するものは代謝能が著し
く高く(ultrarapid metabolizer,UM)、基質薬物を投与された場合、通常投与量では有効
血中濃度ないしは治療効果が得られない事がある。この遺伝子重複は日本人、北欧白人の約
1%、南欧白人の5-10%に認められる。Bertilssonら(1985, 1993)は、治療困難なうつ病症
例にこの遺伝子重複/UMを同定しているが、我々は気分障害の症状遷延化におけるCYP2D6
遺伝子重複の関与を調べる目的で、遷延性気分障害・多数例においてこの重複を含むCYP2D6
遺伝子多型をスクリーニングし、臨床データを検討した。対象は、Görteborg大学
Sahlgrenska病院精神科外来を1994年から99年に受診した気分障害患者のうち、(1)大うつ病
のエピソードにあり(2)2種類以上の治療薬物に反応せず(各々4週間以上のトライアル)(3)8週
間を超えて改善のないものとした。精神科医2人によりSADSの面接が行われた。実験は対象
者のゲノムを用い、Long PCRによりCYP2D6遺伝子重複と欠損を同定し、TaqMan probeを利用
した5’- nuclease assayにより*3,*4アレルを同定した。実験は患者情報についてblindで
行い、データ解析の際には北欧家系以外の患者を除外した。本研究はGörteborg大学医学部倫
理委員会の承認を得て対象者の同意をもって行われた。データ解析は108例の北欧白人につ
いて行われ、9例(0.083; 95% CI 0.031-0.135)に遺伝子重複を認めた。108例のうち
CYP2D6の基質薬物を投与されていたのは81例で、うち8例(0.099,95% CI 0.034-0.164)に
重複を認めたが、これは北欧白人健常者における頻度(0.8-1.0%)と比べ著しく高い割合を
示す。また重複をもつ患者群ではHDRSスコアが有意に高いことが示された。今回の研究によ
り、気分障害の症状遷延化の一部にCYP2D6遺伝子重複が関与している可能性が示唆された。

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